熊本地震(平成28年発生)から、6年目となる年を迎えました。今日から2回に分けて災害時の対応について取り上げていきます。1回目の今日は、発災直後に起こり得ることを確認してそれに対する対策を考えます。(被災地の写真は使用していません。)
【熊本地震】発災直後に困ったこと
【概要】発災直後に困ったこと
数日前に訪れたばかりだった熊本城。当時学生だった私は、大学寮のテレビでその変わり果てた姿を見て唖然としたことを覚えています。同じ地域で震度7クラスの揺れを連続して観測したのは、観測史上の出来事でした。
全壊約8300棟、住家被害は合計16万棟。最大約45万戸断水、約48万戸停電、約11万戸ガス供給停止。交通網については、道路・鉄道・空路が一時不通という被害を受けた熊本県。発災直後、どのようなことで困ったのでしょうか。

その他
- 断水(体や頭を洗えなかった)
- 食あたりやストレスによる下痢・嘔吐・・・・・・など
【参考】平成28年熊本地震「避難生活におけるトイレに関するアンケート」結果報告(10,Apr,2018 大正大学 岡山朋子氏による)

①睡眠環境 ②トイレ ③食事という結果になりました。
【その他の声】
- 指定されていた避難所が被災して夜間気温が低い中屋外での避難を強いられた。
- 避難所に到着した際には出入り口の人通りが激しいところしか空いておらず落ち着かなかった。
- 福祉避難所があると聞いていたが、入れなかった。
- 避難所への到着が遅れ、休憩スペースを確保できなかった。
- 要介護者のおむつ交換(におい)が憚られ、安全確認が出来ていない家等へ戻った。
- 1人に出来ない要介護者がいる中で、食事等の順番待ちに並ぶことが大変だった。
公立小中学校に設置される避難所(1次避難所)に対して、2次避難所である福祉避難所は必ず開設されるわけではありません。加えて1次避難所で生活困難と判断された方とその介護者(少数)が避難できる場所であり、本人の希望だけで利用できる場所ではありません。



日本の避難所の環境の悪さは有名ですが、そんな中でも何か対策しておけることはあるのか、先ほどのアンケート結果をもとにチェックしていきましょう。
【第1位】睡眠環境
【睡眠環境】どこで寝る?避難所?自宅?それとも・・・
寝たい時に電気を消す。
暖かい布団で寝る。
安全な場所で寝る。
これは、人間が体力を回復する上で非常に重要な要素です。
避難所開設後すぐに避難所に到着出来なかった場合、人の出入りが激しい出入り口等にスペースを取らざるを得なくなる上に、避難所に休息スペースを確保できないケースも出てきます。そして寝たくても電気が消せません。在宅避難も1つの選択肢ですが、それもできなかった時【車中泊】を選んだ方がいらっしゃいました。
【第3の選択肢】車内で寝泊りするという選択。
プライベート空間の確保という観点から元々関心が高かった車中泊。ここ数年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、その関心の高さに拍車がかかってきている印象です。大きめな荷物や貴重品を積んでおける点もメリットと言えるでしょう。今回は趣味で車中泊を繰り返す私が、安全を担保して快適に過ごす為に揃えておくと良い道具をご案内します。
こんな感じ
【写真中の使用物品】
- 寝袋
- マットレス
- 目張り
【写真外使用物品】
- 一酸化炭素チェッカー
- 枕(空気で膨らませるタイプ)
あくびと背伸びをしながら早朝の景色を眺めるのがたまりません。この日のツイートでは、寝ぼけて句点を忘れています。
【注意点】車中泊。何に注意するべきか教えます。
- 熱中症(夏季)
- 一酸化炭素中毒(降雪時)
- エコノミークラス症候群(通年)
これらには十分な警戒が必要です。3つ全ての例で死亡事例が報告されています。
〈一酸化炭素中毒(降雪時)〉というのは、車の排気口が雪で塞がれることを想定しています。また、長時間同じ姿勢をとっていると足の静脈の中に血の塊が発生しやすくなります。これが肺の血管に飛ぶと呼吸困難に陥ったり激しい胸の痛みに襲われたりしますので大変危険です。
- 4~5時間ごとに歩く
- 車中で座ったままで、力力トやつま先の上下運動と腹式深呼吸を1時間ごとに3~5分行う
- 水分を摂る(ミネラルウォーター・薄いお茶が望ましい)
- ゆったりした服装を
- 血行を悪くするので、足は組まない
・・・・・・など。
詳しくは日本旅行医学会のホームページに掲載されています。気になる方はぜひご覧ください。
【参考】日本旅行医学会「車中泊の血栓予防!」(12,Apr,2022取得)
- エンジンをかけっぱなしにしない。(排気ガスが車内に充満することによる一酸化炭素中毒の可能性を考慮)
- 石油等の燃焼系暖房器具を使用しない。
- 一酸化炭素チェッカーを活用する。
- 外・下からの冷気を遮断する。(後ほど対策を紹介します。)
- 水分補給
- 冷気の確保(エンジンを稼働しないで冷気を確保する。)
エンジンを止めた状態で出来る方法にこだわるのは、長時間のエンジン稼働が、一酸化炭素中毒の他にガス欠や周辺の可燃物への引火のリスクを持っているためです。



各対策を行う為に必要なものをチェックしていきましょう。
【準備編】車中泊で必要なものは?選び方は?



ツイートの写真での使用物品はこちらです。
- 枕
端からちょこんと飛び出している黒い突起から空気を吹き込む方式。寝袋と同様長島のアウトレットで購入。
- エアマット
ホームセンターで購入。無いと腰痛・背中の痛みが発生します。空気の入れやすさで選ぶのがオススメ。日中の座布団がわりにも使っています。
- 寝袋
長島(三重県)のアウトレットで購入。2人用。両側がチャックで開閉できるため、布団と敷布団感覚でも使用可。(開閉できて干すのが楽。肌触りも◎。)
その他の使用物品
- 一酸化炭素チェッカー
- 目張り(オートバックスで購入。窓枠にぺたぺた貼るだけのマグネット式。吸盤式もありますが、寝ている最中に剥がれている可能性あり。メジャーな車であれば、その車専用の目張りがある場合も。いずれにしてもメーカーの純正品は大変高価であり、社外品で十分です。)
寒さ対策
- 寝袋の快適温度を確認。
使用予定の場所を伝えればそこの気温に適した寝袋をご提案頂けます。 - フェイスマスク活用。
胴体は寝袋等で暖かく出来ますが、意外と気になるのが顔や頭の冷たさ。目元しか露出されませんので、息苦しく無いものを選んでください。 - 断熱マット・断熱シート
ホームセンター等で安く購入できます。寝袋とセットでの活用がオススメです。下から〈断熱マット→エアマット→寝袋〉の順番で使います。
暑さ対策
- シェード(目張り用)を活用して日差しを防ぐ。
- 冷感グッズ
- 網戸(車に取り付けるための網戸が売っています。)
- 経口補水液
夏場の車中泊は冬場に比べてハードルが上がります。十分な電力量が確保できるようであればポータブルクーラーや車載用扇風機、電気毛布等も選択肢の1つになるでしょう。寝袋については【簡易寝袋】と呼ばれる物もありますが、長期間寝泊りすることは想定されていないため早々に背中や腰が痛くなることが想定できます。アウトドア用の製品の用意をオススメします。
【第2位】トイレ
人間である以上、アイドルでも行きたくなるトイレ。
- 被災のストレスから頻尿になった。
- 仮設トイレの設置まで時間がかかった。
- 断水してトイレが使えなかった。
- トイレでの待ち時間が長すぎて疲れた。
- トイレまで行くのが大変だった。
- 仮設トイレ内が狭くて(暗くて・遠くて)大変だった。
- 洋式が混む。(和式が使えない人にとっては不便。)
- 仮設トイレが使いにくく、オムツで対応した。
熊本地震で被災された方からはこのような声が上がっています。熱中症・脱水・エコノミークラス症候群対策として水分補給の必要性をお伝えしたばかりですが、飲む以上出す方法の検討も必要です。よく名前があがる「簡易トイレ」は自動車用品のお店でも購入可能です。平成28年熊本地震「避難生活におけるトイレに関するアンケート」結果報告(10,Apr,2018 大正大学 岡山朋子氏による)によれば、仮設トイレの数は前震(4月14日)から1週間かかって9割に行き届いたとのこと。1週間分の簡易トイレがあると安心かもしれません。
インターネットで検索して頂くと、家にあるもので自作する方法もアップされています。お時間ある際にぜひご覧ください。
【第3位】食事
各種ライフラインが止まった場合を想定して〈最低3食✖️3日、大規模災害時のためには1週間分〉の飲料と食料を確保しておく必要があります。以前期限切れになりそうな保存食をもらったことがありますが、並の舌の持ち主である私には大変美味しく感じられました。
- 冷暗所での保存が望ましいが常温でも保存可。
- 全工程で30分ほど。
- 暖かい。
- 電気・ガス不要。
- スプーン・容器付き。
中には嚥下機能に合わせた食事は必要な方もいらっしゃると思います。災害時、特に発災直後には特別な配慮を要する方のための食事は手に入りません。
介護用と名前が付いてはいますが、おかゆなどは体調不良時に誰しも食べるものです。嚥下機能に配慮が不要な方でも少し用意しておくと使えるかもしれません。
慣れないものを食べると体調を崩す可能性もあります。災害時のために特別に用意するのではなく保存食に慣れておく/慣れているものを保存食にしておく必要があります。
【対策】あなたは何を用意する?



ここでは、首相官邸の情報を参考にご案内します。
- 飲料水、食料品(最低3日分。1人1日3ℓ目安。)
- 貴重品(預金通帳、印鑑、現金、健康保険証など)
- 救急用品(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
- ヘルメット、防災ずきん、マスク、軍手
- 懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、携帯電話の充電器
- 衣類、下着、毛布、タオル
- 洗面用具、使い捨てカイロ、ウェットティッシュ、携帯トイレ
*具体的な荷造りポイントについては4/16に公開します。
【参考・引用】
首相官邸「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」(13,Apr,2022取得)
首相官邸「災害の備えチェックリスト」(13,Apr,2022取得)
消防庁 「非常用持出品チェックリスト」(13,Apr,2022取得)
アウトドア大好きな筆者と致しましては、軍手より作業用の革手袋の方がより安全かと思いました。また、公的機関発行の身分証明書(運転免許証・運転経歴証明書・パスポート・各種福祉手帳・マイナンバーカード等)を持っていることにより銀行印や通帳がなくともお金を引き出すことが可能です。普段使用している銀行にて引き出しができない場合は、他行でも引き出せる場合があります。
「【全世代へ】緊急時の為に準備しよう。|何が欲しい?なぜ欲しい?」では、緊急時にあると助かるモノについて元MSWが医療の観点から解説しています。身元不明の方が救急搬送されてきた時を想定した内容ですが、災害時用にも応用できる内容ですのでぜひご覧ください。
記事概要
- 身元不明で搬送(発見)されても家族と連絡をつけてもらう方法は?
- 緊急時にあると助かる(本人も関係者も)モノは?
- 身元不明の人が搬送されてきた時、病院はどう対応するの?
・・・・・・など。急性期病院の裏話も掲載しています。
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