皆さんはマイナンバーカードを〈保険証〉として利用可能であることをご存知ですか。本日は、マイナンバーカード保険証利用のメリット・デメリットについて、元病院事務員が検証します。ぜひ最後までご覧ください。
【概要編】マイナンバーカードで受診。便利?不便?
【結論】現時点では。
「現時点では」という条件付きで、結論は不便。
「現時点では不便」としたのは、医療機関側の体制(マイナンバーカードを保険証利用するための)が整っていないからです。〈マイナンバーカードの保険証利用〉という構想自体を批判しているわけではありません。ただし、マイナンバーカードの保険証利用について数点気になる部分もありますので、この後順次解説して参ります。
先日はアンケートにご協力頂きありがとうございました。
【マイナンバーカード】保険証利用、従来の保険証とどう変わる?
健康保険証としてずっと使える。
他の医療保険に加入した場合、新たな加入先での保険証発行まで時間を要することがあります。しかし、保険証が手元に届く前でも受診したい場合があると思います。そんな時、通常は10割支払って後から差額を返還等の対応をとりますが、マイナンバーカードを保険証利用すればその手間がなくなります(通常通りの脱退・加入手続きは必要です)。
限度額以上の一時的な支払いが不要になる。
これは大変便利です。
どれだけ便利なのかご案内します。私の元職場では限度額適用認定証が発行できないことによるトラブルが多発していました。どのようなトラブルになるかは「【70歳未満の方必見】元MSWが入院費の計算方法を教えます。」の最後の方でもご案内しています。
限度額適用認定証とは、自己負担(1・2・3割)額から、年収に応じてさらに治療費等の上限(=限度額)を設定してくれる(=治療費等を減額してくれる)証明書です。69歳未満は必ず発行。70歳以上は年収に応じて発行というシステムになっています。

上限(限度額)とは何か解説します。以下の表をご覧ください。
区分 | 限度額(1ヶ月) | 食費/1食 |
---|---|---|
一般 | 57,600円 | 460円 |
II市民税非課税世帯 | 26,400円 | 210円 |
I市民税非課税世帯 | 15,000円 | 100円 |
その他数種類の区分がありますが、これは交付申請をして、証明書をもらうことによって分かります。自分で決めることは出来ません。(70歳未満の限度額は「【70歳未満の方必見】元MSWが入院費の計算方法を教えます。」でご確認頂けます。)
【限度額の考え方】
限度額の中に含まれるのは診察代や手術代等(治療費)です。〈一般〉の方で1ヶ月に57,600円支払った場合(治療費が上限に達した場合)は、その月内の治療費の支払いはなくなります。
ありがたいシステムではあるのですが、難点もあります。
これまで、上の表にある〈限度額〉は病院間・病院と薬局間等での合算ができませんでした。合算できないと何が起きるかみていきましょう。
合算できないことにより発生する事例
ex) 薬局でも病院でも一旦上限まで支払う。
→本当なら57,600円が上限の人が、合算できないために一旦最大11万円程の支払いになる。
合算とは別件ですが、限度額適用認定証の受け取りが遅くなって、限度額以上の支払いをすることになる場合なども考えられます。
※あくまでも一例です。
これまでは、以上の通り一時的に限度額以上の金額を支払って、その後払い戻しを受けるシステムになっていました。しかし、マイナンバーカードを保険証利用することによりこの一時的な支払いが不要になるそうです。(自治体独自の助成金制度はこれまで通り受給者証が必要です。)
また、マイナンバーカードを限度額適用認定証にかえることが出来ます。元病院職員としましては、限度額適用認定証の交付申請ができないことによる支払い困難事例に多数遭遇してきましたので、これは大変ありがたいシステムだと感じます。
このほか、「特定疾病療養受療証(人工透析等)」等の窓口持参が不要になります。
お薬手帳がわりになる。
薬について以下のことがわかります。
- いつ処方されたか。
- どの医療機関で処方されたか。
- どこの薬局を利用したか。
- 何をどれくらい処方されたか。
- どれくらい処方されたか。
2021年の9月以降に処方された薬の内容が確認できます。私は2月上旬に受診した時の記録が残っていました。正確には尾てい骨ではなく仙骨だったわけですが、その辺りは良いでしょう。
この時受診した整形外科の名前と、利用した薬局、処方された薬(カロナールでした。)の量が記載されていました。
その他
- 医療費控除の計算がラクになる。
- 今まで使用していた薬剤等の情報や特定健診の情報を、初診の病院の医師と共有出来る。・・・・・・など。
詳細は「マイナンバーカードの健康保険証利用について~医療機関・薬局で利用可能~」(厚生労働省)でご確認頂けます。(15,Mar,22取得)いつでもかかりつけ医を受診できるわけではありませんので(旅行先、出張先等での受診など。)、診療情報の共有ができることも1つのメリットと言えるでしょう。今後は手術情報についても共有できるようになるようです。
【マイナンバーカード 】保険証かわりに使える医療機関はどこ?
2022年3月13日時点での利用可能医療機関・薬局の一覧(厚生労働省発表)です。また、保険証利用できる医療機関・薬局ではステッカーやポスターが掲示されていますので、それがあるか見てみるのも確認方法の1つです。当面は保険証を持参して受診することをお勧めします。(画像出典:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局についてのお知らせ」15,Mar,22取得)




【準備編】マイナンバーカードを保険証利用するために
通常、申請から交付まで1ヶ月程度かかります。週末でもマイナンバーカードの受け取りが可能な場合もありますので、各自治体へご確認ください。
【使用方法編】マイナンバーカード。医療機関でどう使う?
【マイナンバーカード】保険証利用のやり方
カードリーダーは、医療機関の窓口に設置されています。その後はカードリーダーの指示通りに操作します。車椅子に座ったままでも利用可能。お子さんは保護者の方が操作することも可能です。



保険証を窓口の方に渡して処理してもらうよりは自分でやることが増える形ですね。
【まとめ】保険証利用のメリット・デメリット
メリット
- 薬剤や特定健診等の情報が、初診の医療機関でも正確に共有できる。
- 限度額適用認定証が不要になる。・・・・・・など。
デメリット
- 医療機関側の体制がまだ整っていない。
- 医療機関の窓口で患者さん自身にてやることが増える(従来の保険証と比較して)。
- 暗証番号が分からない場合や、スキャンできないスマートフォンを使用している場合は一部の機能が使用できない。
医療機関での受付の際は顔認証が基本になります。(顔認証で不具合がある場合は暗証番号でも可。)救急外来(救急車を受け入れる外来)の患者さんも担当していた私としては、顔認証が出来ず(怪我等)本人が暗証番号を言えない場合も気になってしまうところです。
いかがでしたでしょうか。保険証利用検討の参考になれば幸いです。ご質問等は「お問い合わせ」ページより承っております。