今回は、介護離職を考えた時に利用をご検討頂きたい制度や、介護を理由に退職する場合に使える仕組みをご紹介します。退職したくない方が退職せず済むよう企業の方にもご覧頂けますと幸いです。
【概要編】何がある? | 介護離職防止のため支援(法定)

法律で決められている(法定)支援制度のご紹介です。
はじめに
労働者がこれらの制度の利用を申し出たり、実際に利用したことを理由として、正社員からパートタイマーになるよう強要したり、退職を強要することは育児・介護休業法で禁止されています。
厚生労働省「よくあるお問い合わせ」(2022,Feb,27取得)
あってはいけないことですが、万一これから紹介する制度の利用を申し出たりや利用したりしたことを理由に不利益を被りそうになった場合は必ず〈全国の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)〉へご相談ください。絶対に1人で考え込まないでください。(※その他どんな制度が使えるか相談に乗ってもらえます。)
介護保険の利用開始方法
【介護休業】
申 請 先:会社(利用開始日の2週間前までに申請。)
役所手続き:なし
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。有期契約労働者(パート、アルバイト、派遣など)も一定の要件を満たせば取得できます。
厚生労働省「介護休業制度などを知っていますか?」(2022,Feb,28取得)
介護休業の対象となる家族
- 配偶者(事実婚の場合を含む)
- 子(養子を含む)
- 父母(養父母含む)
- 配偶者の父母(養父母含む)
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
用途例
- 実際に介護するため。
- 仕事に復帰できる環境を整えるため。
つまり、必ずしも介護をしている必要はないということです。30日、30日、33日や93日連続といった休みの取り方があります。
【memo】
要介護状態の家族を介護する労働者は原則、介護休業を取得できます。
以下該当する方は取得できません。
①日雇いの方。
②〈入社1年未満・申出の日から93日以内に雇用期間が終了・1週間の所定労働日数が2日以下〉の方。(企業によって取得できる場合があります。)
③産前・産後休業中の方。
有期契約労働者(パート等)が取得する条件
①入社1年以上経過していること。(申請時点)
②「介護休業開始予定日から数えて93日を経過する日」から6ヶ月経過する日までに雇用約期間が満了となり、雇用契約が更新されないことが明らかでないこと。
②が少し分かりにくいですが、「1年以上勤めていて、介護休業終了後6ヶ月勤務予定であれば、取得できる」と言っています。また、令和4年4月より「入社1年以上」という条件が段階的に撤廃されていきます。
介護休業給付金
一定の基準を満たすと、雇用保険から介護休業給付金が支給される場合があります。受給資格の有無の確認や手続きは管轄のハローワークが窓口です。
【受給資格確認に必要な書類】
1.雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
厚生労働省「Q4 介護休業給付の受給手続には何が必要でしょうか。また、どこで手続きをすればよいのでしょうか。」(2022,Feb,28取得)
2.賃金台帳、出勤簿又はタイムカード(1に記載した賃金の額及び賃金の支払い状況を証明することができる書類)
【支給申請に必要な書類】
1.介護休業給付金支給申請書
厚生労働省「Q4 介護休業給付の受給手続には何が必要でしょうか。また、どこで手続きをすればよいのでしょうか。」(2022,Feb,28取得)
2.被保険者が事業主に提出した介護休業申出書
3.住民票記載事項証明書等(介護対象家族の方の氏名、申請者本人との続柄、性別、生年月日等が確認できる書類)
4.出勤簿、タイムカード等(介護休業の開始日・終了日、介護休業期間中の休業日数の実績が確認できる書類)
5.賃金台帳等(1の申請書に記載した支給対象期間中に支払われた賃金の額及び賃金の支払い状況、休業日数及び就労日数を確認できる書類)



有期契約労働者の方も受給できる場合があります。介護休業後に勤務先を経由して申請します。(復職できないともらえないのがなんとも言い難い気分になります。)
【介護休暇】
申 請 先:会社(当日申請も可。)
役所手続き:なし
介護や通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネージャーとの打ち合わせなどを行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で休暇を取得できます。
厚生労働省「介護休業制度などを知っていますか?」(2022,Feb,27取得)
介護休業と1文字違いのこの制度。
しかし、中身はかなり違います。
介護休業は、まとまって休みを取るのに対して、介護休暇は単発で(1日単位/時間単位)取得するものです。取得の意向を伝えるのは当日でも構いません。申請方法は企業ごとで異なるため、職場でご確認ください。
介護休暇の対象となる家族
- 配偶者(事実婚の場合を含む)
- 父母(養父母含む)
- 配偶者の父母(養父母含む)
- 子(養子を含む)
- 祖父母
- 孫
- 兄弟姉妹
上記のうちの誰かが「要介護状態にある」労働者が介護休暇を取得できます。要介護状態とは、「ケガ、病気又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上、常時介護を必要とする状態」を言います。介護休暇を取得する際、職場から対象者が要介護状態にあることを証明する書類を提出するよう言われる場合がありますが、必ずしも医師の診断書である必要はありません。
また、要介護認定を受けていることは介護休暇を取得する条件ではありません。
〈memo〉
①日雇いの方は取得できません。
②アルバイト・パート等でも取得可能です。
③入社6ヶ月以内/1週間の所定労働日数が2日以下の方は職場の規定(労使協定)により取得できない場合があります。
〈介護休暇の用途詳細〉
①通院付き添い
通院の足がない、1人では支払いや受診が困難など様々な理由でご家族等がつきそう場合が出てくると思います。その際に介護休暇を使うことができます。
②介護サービスの手続き
様々な介護サービスがありますが、これらを利用していく中で避けては通れぬ〈手続き〉。ちょっと役所に行きたい。そんな時に使うことができます。
③ケアマネージャーとの打ち合わせ
介護保険のサービスを使い始めるとケアマネージャーという方と関わるようになります。ご本人の様子を見ながらどのようなサービスが必要か検討して調整してくださる方です。最低でも1回/月はケアマネージャーさんと面談があります。大きく様子が変わることがあれば複数回の面談もあり得るかもしれません。そんな時に使うことが出来ます。
休暇中に給与が支払われるか否かは企業ごとで異なります(企業側に支払う義務がないため。)ので、就業規則をご確認ください。(育児介護休業法)また、介護休業のように、雇用保険からお金が支払われることはありません。この点も介護休業との違いと言えます。



どう考えても〈5日/年〉では足りないというのが私の見解ですが、何もないよりは助けになるはずです。時間単位でも取得可能ですので、可能な限り効率的に使うようにしましょう。
【その他】
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 介護のための所定労働時間短縮等の措置
このほか、企業独自で制度を整えている場合がありますので、職場の担当者様(人事部・総務等)にご確認ください。
【まとめ】介護休業と介護休暇の違い
介護休業 | 項目 | 介護休暇 |
---|---|---|
職場 | 申請先 | 職場 |
あり(条件あり) | 介護休業給付金 | なし |
利用開始日の2週間前まで | 申請期日 | 当日申請可 |
通算93日(3回まで分割可) | 取得日数 | 5日/年(時間単位で取得可) |
【やっておくべきこと】介護離職 | しないために、したときに。
離職しないために。
まずはじめにやるべきことをリストアップしてみました。もっと詳しい情報やチェック項目は「仕事と介護の両立支援制度」(厚生労働省)に掲載されています。一般の方にも分かりやすいように書かれています。ぜひ、一度ご覧になってみてください。
法律で決められている両立支援制度と、会社独自の両立支援制度を確認する。法律で決められている制度については都道府県労働局雇用環境・均等部(室)でも情報提供をしてもらえます。
離職した時に。
介護を理由に離職した場合、自己都合で退職された方に比べて失業保険の内容が手厚くなる場合があります。具体的には、失業等給付を受けられる期間が通常より長くなったり失業等給付を受けられるまでの期間が短くなったりするといった具合です。ご自分が対象になるか、ハローワークにご確認ください。
- 国民健康保険の保険料減免の対象になるかを確認。
私も経験がありますが、社会保険から国民健康保険に入ると一時的に保険料が膨大になる可能性があります。ご家族の扶養に入ることを最優先に検討頂き、それが出来ない場合は国民健康保険加入時に保険料減免対象になるかご確認ください(自治体窓口で、介護のため離職したことを申し出てください。)。



私の場合は減免対象にならず、1ヶ月で5万円弱納付したこともありました。必ず、減免対象にならないか確認してください。(※金額はご本人の年収により異なります。)
参考
〈扶養に入るメリット〉
ご自身(退職された方)の保険料が無料になることに加えて医療機関では保険適用金額で受診できます。保険料未納扱いにはなりません。また、扶養する側(ex:ご自身の配偶者等)の保険料はあがりません。
【介護離職】企業の方へ。
【確認必須】育児介護休業法の改正。内容は確認済ですか?



【介護休業】の項目で以下のように記載しました。こちらは現行の条件です。
有期契約労働者(パート等)が取得する条件
①入社1年以上経過していること。(申請時点)
②「介護休業開始予定日から数えて93日を経過する日」から6ヶ月経過する日までに雇用約期間が満了となり、雇用契約が更新されないことが明らかでないこと。
令和4年の4月1日から「①の入社1年以上経過していること(申請時点で)」が段階的に撤廃されていきますので、この変更点にご注意ください。「②」についてはこれまで通りの運用となります。
【今さら聞けない?】どんな制度があるのか、自分は何ができるのか。
介護を理由とした離職が悪いこととは思いませんが、離職したくない方が離職せず済むようにするために何ができるのか、担当者として、上司としてどれくらいご存知ですか?ばっちり把握している方もいらっしゃることと思いますが、(いや、実は・・・)という方のために厚生労働省のホームページ「事業主の方へ」のご紹介です。
ただの紹介ページではなく、【人事担当者・従業員向け】のワークシートやチェック項目など、便利なツールがアップされています。1からこういったものを作るのは大変ですので、自社で使用可能か一度ご覧頂くのも良いかと思います。お悩みの方はぜひ利用をご検討ください。
いかがでしたでしょうか。お問い合わせ等は「お問い合わせ」ページにて承っております。