今回お届けするのは、継続して透析をする(維持透析)ことになった方・血友病の方・後天性免疫不全症候群の方への情報です。「特定疾病療養費制度(とくていしっぺいりょうようひせいど)」と呼びます。それでは参りましょう。
【概要】特定疾病療養費制度とは?
- 継続的に透析をする方
- 血友病の方
- 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群
【制度概要】
長期間にわたって継続しなければならず、著しく高額な医療費が必要となる疾病については、自己負担限度額を通常の場合より引き下げ、1万円(人工腎臓を実施している慢性腎不全の上位所得者は2万円)とする
全国健康保険協会「特定疾病に係る高額療養費支給特例について」(29,Dec,21)
〈長期間継続して特定の治療を受ける方に対して、年収に応じて自己負担額の上限を設ける〉と言っています。〈長期間継続して特定の治療を受ける方〉については以下【対象者】の項目で説明致します。
自己負担額の詳細
上限額の考え方
入院+入院→合算可能
外来+外来時の処方薬→合算可能
入院+外来→合算不可
〈上限1万円/Mの患者さん〉
例)12月にA病院とB病院で入院した。
→A病院で1万円まで・B病院で1万円まで。
合計が上限額を超えている。
保険者に超過分の返還請求をする。
例)12月にA病院の外来で薬を処方された。
12月中にそれをB薬局で受け取った。
→A病院1万円、B薬局で5000円。
合計が上限額を超えている。
保険者に超過分の返還請求をする。
例)12月にA病院で外来受診。同月に入院も。
→A病院で1万円、外来で1万円。
入院と外来は合算できない。
医療費の返還はない。
その他の具体例
【対象者】
相変わらずの長文ですが、〈対象疾患は3つあり、それは法律の中にて決められている。〉と書かれています。
特例の対象となる特定疾病については、法令上、指定されています。
血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第Ⅷ因子障害または先天性血液凝固第Ⅸ因子障害(血友病)/ 人工腎臓を実施している慢性腎不全 / 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、厚生労働大臣の定める者に係るものに限る。)
全国健康保険協会「特定疾病に係る高額療養費支給特例について」(29,Dec,21)
対象者
対象者は法律の中で決められています。
- 血友病(規定あり)
- 慢性腎不全(透析実施)
- 後天性免疫不全症候群(規定あり)

該当するかについては、主治医の先生にご確認ください。
【申請方法】特定疾病療養費制度
加入している保険によって、入手する場所が変わります。協会けんぽ(全国健康保険協会)の方用に以下にリンクを添付しました。国民健康保険・後期高齢の方は各自治体へ。組合健康保険の方は各組合か職場の人事労務担当者へご確認ください。(組合以外の書式は病院で保管している場合もあります。)
協会けんぽの方
入手した診断書を病院へ提出。主治医の先生に診断書を作成頂きます。
治療開始月中に申請をする必要があるため、診断書は早急に手配しましょう。(例:12月開始→12月中に申請。)
窓口(例)
組合 :組合/職場
協会けんぽ:協会けんぽ
国保/後期 :各自治体
申請時に必要なもの(例)
- 本人の保険証
- マイナンバー(住民票・通知カード等)
- 本人の身分証明証
- 窓口に行く方の身分証明証
- 委任状(本人が申請に行けない場合。)
- 診断書
受給資格の調査及び上限額の決定をします。
保険者から特定疾病受領証を受け取る。
特定疾病療養受領証を医療機関の窓口で提出する。
保険者が分からない方へ
保険証の下の方をご覧ください。
- 自治体の名称 :国保/後期
- 〇〇組合 :組合
- 全国健康保険協会:協会けんぽ
【注意】手続きを忘れた時の医療費は?
ここでは透析治療を例に挙げて説明致します。
1ヶ月の透析治療の医療費は、患者一人につき外来血液透析では約40万円、腹膜透析(CAPD)では30~50万円程度が必要といわれています。
一般社団法人 全国腎臓病協議会「透析治療にかかる費用」(28,Dec,21)
外来透析で40万/M。つまり、入院で透析はもっと高額になる(食費・オムツ代等)ということです。それを回避するための「特定疾病療養費制度」です。主治医の先生にご相談頂き、〈対象になる場合は透析を開始した月内〉に制度利用開始の手続きを取ってください。(ex. 初回:12/15→12月中)



申請月の1日までしか遡って制度を利用することができません。申請は必ず当月中に終えてください。
限度額適用認定証や高額療養費の手続きではカバーできない部分です。
対象となる場合は必ず手続きをしましょう。
【関連制度】



使える可能性がある制度のご案内です。
【65歳未満】透析継続中の方へ
〈障害年金〉と〈身体障害者手帳〉の対象となる場合があります。障害年金は「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(日本年金機構:30,Dec,21入手)。身体障害者手帳は「【元MSW解説】身体障害者手帳|対象はだれ?取るべき?取り方は?」(当サイト内他記事)でご案内しています。
【20歳未満/20歳以上】血友病の方
〈小児慢性特定疾病医療費助成制度〉〈小児慢性特定疾患治療研究事業〉の対象になる可能性があります。小児慢性特定疾病医療費助成制度は「【U18】小児慢性特定疾病|もらえるお金、使える制度を解説。」で。小児慢性特定疾患治療研究事業は「血友病とともに生きる | 血友病治療に利用できる医療制度」(武田薬品工業:30,Dec,21入手)でその他の制度も詳しくご覧いただけます。
【その他】3疾病いずれでも使える可能性あり
本日のポイント |
---|
必ず、治療が始まった月中に申請を済ませる。 |
当月中に申請できないと、請求が高額になる。 |
特定疾病療養費費制度以外でも使える可能性がある制度あり。 |
いかがでしたでしょうか。ご質問等は「お問い合わせ」ページにて承っております。